原子力安全改革プラン進捗報告(2014年度第1四半期)に係るクライン委員長のコメント
2014年8月1日
クライン委員長のコメント
東京電力がとりまとめた原子力安全改革プラン進捗報告(2014年度第1四半期)の内容を確認した。総じて、原子力安全改革は着実に進捗しているものの、改革のより一層の加速化が必要である。
1. 経営層の安全文化が前進
- 原子力改革は、経営層がリーダーシップを発揮して推進することが重要である。東京電力の経営層は、原子力安全監視室の提言を踏まえ、執行側に指示するなど、ガバナンスが強化されてきたことは評価できる。
- 世界クラスの原子力安全に到達するため、改革の項目ごとの重要評価指標(KPI)を活用し、組織全体への浸透度合いをモニタリングしつつ改革を推進すること。
- 福島第一の「事故炉の廃止措置」と柏崎刈羽の「発電炉の運転」は全く異なる。
- 東京電力はこれまで経験したことのない「事故炉の廃止措置」にチャレンジするため「福島第一廃炉推進カンパニー」を設置し、原子炉メーカーからバイスプレジデントを招へいしてメーカーの技術・知見を活用しつつプロジェクトマネジメントを強化している。また、海外の類似施設のベンチマークを開始するなど、「事故炉の廃止措置」に合わせた運営・安全管理体制の構築に向けて、前向きに取り組んでいることは評価できる。
- 福島第一での長期的な視点でのチャレンジは燃料デブリの取り出し、除染、立地地域の復興であるが、直近の課題は汚染水問題である。汚染水に関するトラブルなどが度々発生しているものの、その件数は減少傾向にあり、少しずつではあるが取り組みの成果が現れてきている。
- これまで発生したトラブルの根本原因分析を確実に行い、得られた教訓を今後に生かし、しっかりとした運営・安全管理体制を構築していく必要がある。
- 柏崎刈羽では、フィルタベント設備の設置工事が順調に進められているほか、福島第一事故を踏まえた更なる安全対策に取り組んでいることは評価できる。
- 防災訓練は繰り返し行うなどして問題点を洗い出しながら改善を重ねており、これらを踏まえると以前よりも安全かつ強固な発電所になってきたと評価できる。
- 今後は、引き続き安全性の向上に努めるとともに、外部との共同訓練実施を積み重ねるなど、更なる安全性向上に努めること。
- 東京電力は、技術的な情報については動画やアニメーションを用いた解説を行うなど、国内外とのコミュニケーションについて、透明性、迅速性、わかりやすさ、メッセージ性の観点で改善を重ねていることは評価できる。
- あらゆる面において引き続き受取側を一層意識したコミュニケーションを実践する必要がある。
なお、米科学アカデミーが先週、福島原子力事故の教訓に関する報告書をとりまとめた。安全文化の重要性、深層防護や緊急時対応の強化など、アカデミーによる提言の多くは、原子力安全改革プランに含まれており、東京電力が既に取り組んでいることを誇りに思う。
原子力改革監視委員会委員長として、委員会の活動をサポートしてくれている各委員に感謝を申し上げたい。当委員会は今後も東京電力の原子力安全改革プランの実現に向けた進捗、特に安全文化の浸透について監視していく。
配布資料・議事概要
- 原子力安全改革プラン進捗報告(2014年度第1四半期)(2,455KB)
- 「原子力安全改革プラン進捗報告(2014年度第1四半期)」概要(284KB)